再婚をし、先妻の子と後妻がいる場合
ここでは、男性が再婚した場合を想定していますが、女性が再婚した場合も同様です。
再婚して、先妻の子と後妻ががいる場合、法定相続人は、先妻の子と後妻となります。
被相続人にとっては、配偶者も子もいるため、直系尊属や兄弟姉妹は法定相続人になりませんし、先妻も法定相続人にはなりません。
この場合、法定相続分で遺産分割すると、後妻二分の一、先妻の子二分の一(子の人数で案分しますが相続財産における割合は変わりません)となります。
現金や預貯金等分割しやすい場合は、法定相続分どおり分割することは可能です。
しかしながら、不動産の割合が多い場合は、法定相続分どおりに分割することが困難な場合もあります。
前回の投稿でも書きましたが、配偶者居住権を活用したいところですが、遺産分割協議でこれを進めようとすると協議自体が困難な場合があります。
なぜなら、配偶者居住権の制度が始まって間もないこともあり、一般的には認知度が低いことから、先妻の子に制度を理解してもらえるかどうかが
問題になるからです。
民法改正前であれば、
例えば、居住用の不動産の相続税評価額が4,000万円、預貯金が4,000万円だった場合、二分の一づつ分割すると、配偶者が不動産、先妻の子が預貯金を相続
することが考えられます。
民法改正後で考えると、
上記の例で配偶者居住権を利用した場合を考えてみましょう。
不動産の配偶者居住権の価値が2,000万円だったとすると、配偶者は配偶者居住権2,000万円、預貯金2,000万円を相続することができます。一方、先妻の子は不動産のその他の権利(売却等)2,000万円分と預貯金2,000万円分を相続しますが、先妻の子は後妻が生存しているうちは不動産を売却等することはできません。この場合、先妻の子がこの案分で同意してくれるかどうかわかりません。
不動産を相続しても、実際には売却して現金にすることができないため、協議が難航することが予想されるからです。
先妻の子と後妻の関係が良好であればこのような選択肢もあるかもしれませんが、往々にしてあるのが、背後にいる親戚や友人などです。当事者同士が納得していてもあれやこれや、いらぬ(かどうかはわかりませんが)おせっかいを焼いてくることも多いのです。
このような場合は、自筆証書遺言でも構いませんので、遺言書を作成しておくのが望ましいといえます。
当然、先妻の子に遺留分がありますので配慮は必要ですが、配偶者居住権を考慮した遺言書を書いて、配偶者が生活に困らないようにしておきましょう。
【先妻の子に多く残したい】
配偶者自身に十分な資産があり、先妻の子に残したい場合もありますよね。
このような場合は、配偶者の遺留分に留意する必要があります。配偶者の遺留分は、財産の四分の一です。
また、遺言書を書く場合は、遺言執行者に第三者である行政書士等を指定することで、先妻の子と後妻が直接会わなくても相続ができますので、是非、遺言執行者を指定しましょう。
相続財産が預貯金と居住用の不動産一つだけなどの場合は、あえて公正証書遺言を作成しなくても自筆証書遺言で対応が可能です。法的に有効な遺言書にするためにも遺言書の添削を受けてみてはいかがでしょうか。