内縁の妻や夫の場合 遺言書を書いたほうがよい人
遺言書を書いたほうがよい人のうち、内縁の妻や夫がいる人は必ず遺言書を作成してください。
なぜなら、
内縁の妻や夫は法定相続人にはならないからです。
【公的年金の場合】
相手方に配偶者がいない内縁関係の場合、公的年金がもらえる場合があります。相手方と自分は戸籍上独身で、婚姻の届出をしていないけれど、社会通念上、夫婦としての共同生活があると認められる場合に遺族年金等が認められる場合があるということです。簡単にいうと、籍を入れずに夫婦関係にある場合です。
また、法律上の配偶者がいるけれども、夫婦としての実体が全くない状態で、所定の条件を満たせば遺族年金等がもらえる可能性があります。
【相続の場合】
相続の場合は、公的年金とは全く違って、内縁関係の妻や夫には相続の権利はありません。ですから、法定相続人にはなりません。
では、どうなるかというと、遺言書がない場合は、法定相続人による遺産分割協議が行われ、その中で遺産の分割が行われます。そもそも内縁の夫や妻は遺産分割協議の場に呼ばれることすらありません。
ですから、内縁関係にある場合は、お互いの将来をしっかり見据えてどのような方法が一番良いのかを考える必要があります。
対策について、例を挙げて説明していきます。
【暦年贈与を使う方法】
残してあげたい相手に、自分の財産を毎年少しずつ贈与していく方法があります。
生前贈与については単なる節税対策に限らず、特定の人に財産を与えるときにも有効で、一人につき年間110万円まで非課税となっています。。
これを暦年贈与といいますが、年間110万円までの贈与であれば税金を課せられません。また、贈与する相手は他人でも問題ないため、内縁の妻や夫に対して生前贈与
しておくことも可能です。こうした方法であれば、相続に関する受取人問題について悩む必要はなく現金を渡せます。
非課税枠は年110万円ですが、110万円を超えて贈与しても構いません。例えば、毎年200万円を贈与し、9万円の贈与税を払うことを選択してもよいのです。
相続税の例:(200万円-110万円)×税率(この場合は10%)=9万円
ただ、遺留分は生前贈与された財産まで含めて考える必要があるため、遺留分は侵さないように調節しなければいけません。
【生命保険を利用する方法】
生命保険を利用して、死亡保険金の受取人を内縁の妻や夫にするという考えもあります。
しかしながら、生命保険契約の際に、死亡保険金の受取人を内縁の夫や妻にすることは原則できません。特に、法律上の婚姻関係が継続している場合には、死亡保険金の受取人を内縁の夫や妻にすることはできないのです。これは、親族ではない他人を受取人にすることによる保険金殺人などのリスクを回避するということでもあります。ですから、生命保険で財産を残すことは考えないほうがいいようです。
【遺言書を書く】
一番確実な方法は、遺留分に十分配意したうえで、法的に有効な遺言書を書くという方法です。
遺言書では、法定相続人以外にも「遺贈」という方法で財産を分けることが認められています。(法定相続人に財産を分けることを相続、それ以外の人に財産を分けることを遺贈といいます)
この場合は、遺言執行者を行政書士などの法律の専門家に指定しておくことをお勧めします。
遺言書がある場合で遺言執行者の指定があり、遺留分等の侵害がなく民法上問題がなければ、法定相続人の意思にかかわらず、遺言執行者が財産分与を
実行します。
遺言執行者が指定されていない場合は、遺言書に書かれた人の間で協議して、遺言書のとおりでない相続も可能です。(内縁の妻や夫が圧力に耐えかねて合意してしまうことも想定されます)
相続で一番大変なのは、当事者の協議が進まず、いつまでも相続の手続きができないこと、協議が成立しない場合は最終的には家庭裁判所の審判を受けなければなら
ず、通常の相続よりも「時間」「費用」「関係者の人間関係を壊す」ことが想定されることです。また、相続税を納付する必要がある場合は、「相続の開始を知った
日の翌日から起算して10か月以内」に相続税を納めなければなりませんので、時間的な猶予もあまりありません。
遺産分割の争いは、何年もかかることもあり、弁護士費用もかさむこともあって、百害あって一利なしといえます。
また、遺言書の意に添わない遺産分割協議で守ってあげたい人を守れないことも想定して、遺言執行者を指定しておきましょう。
遺言執行者は、親族でも構いませんが、複雑な事例の場合、公平・公正な判断が難しいこともあるため、信頼できる法律の専門家に依頼するのが一番です。
もちろん、遺言の執行に関する費用は掛かりますが、裁判になったり、相続税の納付期限に間に合わないなどのリスクと考えると、費用を払っても遺言執行者を
指定しておくのが一番良い方法です。
そのために、生前から信頼できる専門家を探しておきましょう。無料の相談会などに参加しても構いませんが、自分が信頼できそうな人をしっかり選ぶことも重要です。