任意後見契約(移行型)
みなさんこんにちは。
成年後見制度をご存じですか?
ずっと元気なことに越したことはありませんが、もし自分が認知症になってしまったとき、よく耳にするのは「成年後見人を選任してください」のひとこと。
実は、成年後見制度はちょっと使いづらいんです。
そこで、今回は任意後見契約(移行型)の説明をします。
まずは、成年後見制度を簡単に説明します。
【成年後見制度とは?】
成年後見制度は、本人やそのご家族にとって、窮屈な制度である可能性が高いです。
認知症になった場合、一般的には家族や親せきなどが家庭裁判所に成年後見制度の利用を申し立てます。
家族や親族が成年後見人になれると思っていたら、今まで会ったこともないような弁護士や司法書士などに決まる事例が増加しています。
「えっ!家族の選んだ人が成年後見人になるのではないの?」
令和5年の最高裁判所の統計をみると、親族が成年後見人に選任される割合は、たったの
18.1%、しかも年々減少傾向になっています。
しかも、成年後見制度は、「撤回ができない」のです。
名義人の財産を守る趣旨なのですが。。。
自分の財産が弁護士や司法書士に管理されてしまうだけでなく、その使いみちについても大きな制限があります。
家庭裁判所や成年後見人に家族の生活費にまで「費用がかかりすぎる」などと指摘されることもあり、これまでの生活から一変してしまうことだってあります。
【任意後見契約ってなに?】
今回は、任意後見を自分に合った使い方をするために任意後見契約について説明します。
任意後見契約とは、自分の判断能力が高い状態で信頼できる相手と任意後見契約を結びますので、意に沿わない内容の契約をしてしまう心配がありません。
任意後見契約は、必ず「公正証書」にする必要があります。
任意後見契約に係る公証人に支払う費用は、概ね3万円~5万円くらいです。
公証人は、自宅や施設などにも出向いてくれますので、公証役場に行けない人でも対応可能です。(別途出張料金がかかります)
任意後見契約の3つの種類について解説します。
任意後見契約の3つの種類
1.将来型
2.即効型
3.移行型
の3つの類型があります。
1.将来型
自分が元気なうちは自分で財産を管理し、認知症などで判断能力が低下した時点で任意後見を開始します。
将来型の任意後見契約では判断能力は低下していないけれども「体が動かなくなってきた」、「入院したので自分で管理できない」などになったケースに対応できません。
また、任意後見が開始するまでは(早くても選任までに1か月はかかります)任意後見人の候補者は財産を管理できませんので、判断能力の低下から任意後見が開始するまでは財産の管理
にタイムラグが生じることになります。
2.即効型
判断能力が少しずつ低下してきたとき、複雑でない契約なら理解できるという場合にはすぐに任意後見が始まる即効型が検討できます。
ただし、あまり複雑な契約となると内容が理解できない可能性があり、希望の内容を任意後見契約に盛り込めないことがあります。
最悪の場合は、判断能力の低下を理由に公証人が任意後見契約書を作ってくれないことも考えられます。
そこでおすすめしたいのが、
3.移行型
自分が元気なうちは自分で財産を管理し、認知症などで判断能力が低下した時点で任意後見を開始します。
将来型ではできなかった、
・体が不自由になってきた
・銀行に行くのがつらくなってきた
・入院したので財産の管理ができなくなった
場合、であっても信頼できる人に財産管理を任せる契約を追加しておく類型です。
この契約は「財産管理契約」と呼ばれます。
この契約を任意後見契約に追加しておくことで、契約時または契約書に記載した開始日から財産管理が始まります。
元気なうちはこの財産管理の契約に基づいて財産を管理してもらいます。
管理してもらう内容は、自由に決めることができます。
自分でできる部分はご自身で管理しても構いません。
銀行の通帳だけ管理してほしい場合は、それだけを目録に記載します。
そして、判断能力が低下したときには、任意後見人候補者(財産管理契約の受任者)が任意後見開始を家庭裁判所に申し立てます。
このように、判断能力が低下したタイミングで財産管理契約から任意後見契約に移行するので移行型と呼ばれています。通常は実際に後見人が財産管理するまで数ヶ月のタイムラグが発生するため、緊急性のある財産管理をスムーズに行えない可能性があります。
しかし、この移行型の任意後見契約には、財産管理にタイムラグがありません。
この点は非常に大きなメリットとなります
一方で、任意後見人候補者に財産に関する大きな権限を与えてしまうため、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。
財産管理契約、任意後見契約の内容を慎重に検討し、目録も作成する必要がありますので、是非ご相談ください。