遺言書を書くときに気をつけたい 寄与分と特別寄与料

遺言書を書くときに気をつけたいポイント

遺言書を書くときに遺留分に配慮する必要があることは以前に書いた通りです。

寄与分と特別寄与料の違い

寄与分と特別寄与料を比較すると以下の図のようになります。

寄与分とは

「寄与分」(きよぶん)」とは、被相続人(亡くなった人)の生前に、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をしたことで、その貢献に応じた金額が相続分に加算される、その加算分のことをいいます。

つまり、法定相続分に貢献に応じた金額がプラスされるということです。

寄与分が認められる例としては、

① 被相続人の事業に関する「労務の提供又は財産上の給付」があった場合。

② 被相続人に対する「療養看護」その他の方法により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与があった場合。

寄与分があった場合には、共同相続人が協議して決めることになります。もし協議で寄与分が決まらないような場合には、家庭裁判所が相続関係を考慮したうえで、寄与分を定めていくことになります。

寄与分が認められた場合は、一旦寄与分を相続財産から切り離して各相続人の相続分を計算し、最後に特別の寄与をした相続人に、その寄与分を与えることになります。

特別寄与料とは

特別寄与料は、比較的新しい制度です。改正法施行の日(令和1年7月1日)以後に開始した相続について適用され、これより前に開始した相続については、適用がありません。

なぜ、新しい制度ができたの?

「寄与分」の説明をしましたが、ここでは相続人でなければ寄与分を受け取れないことがわかっていただけたと思います。

では、相続人ではないほかの親族の貢献度合いは考慮されないのでしょうか。そこで、公平を図る観点から、特別の寄与行為をしたのであれば、相続人以外の方でも遺産を取得できるようにしたのが、「特別の寄与制度」です。

特別の寄与をした者のことを「特別寄与者」といいます。また、特別寄与者は相続人に対して、寄与に応じた額の金銭(これを「特別寄与料」といいます)の支払いを請求することができます。

特別寄与料の支払い請求ができるのは、被相続人の親族です。

何をもって「親族」というのかは、同じ民法の725条に規定があります。日常用語としても親族という言葉はよく使われますが、法律上の「親族」は、その範囲が厳密に定められています。

①6親等内の血族
②配偶者
③3親等内の姻族

子の配偶者は、「③3親等内の姻族」の範囲内ですから、親族に含まれ、特別寄与料の請求をする権利があります。

どのような人に特別寄与料の請求権が認められるのでしょうか。

【民法1050条1項】
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと」を要件としていますので、何もせずに当然に特別寄与料を請求することはできません。

法律上の相続人は何もしなくても遺産を相続できるわけですが、特別寄与料は違います。法定相続人でない者が特別寄与料を請求するには、「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと」が必要です。

「療養看護その他の労務の提供」についてですが、「療養看護」は具体例の1つであり、これに限られるわけではありません。

「その他の労務提供」とは、例えば被相続人が事業をやっていて、その事業に無償で従事していたような場合を指します。

では、仮に「特別の寄与」が認めれられたとして、具体的にどのくらい受け取れるのでしょうか。また、誰に請求すればよいのでしょうか。

特別寄与料を主張する人が、相続人に対して特別寄与料を請求して、当事者間で特別寄与料を話し合いで決めることが1つの方法です。

しかし、協議が成立しなかったときや、そもそも相手方が協議に応じないときは、家庭裁判所に「特別寄与に関する処分の調停申立て」を行います。申立書を提出する裁判所は、請求の相手方である相続人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。処分の請求を受けた家庭裁判所は、特別寄与料を定めて、相続人に対して金銭の支払いを命じます。

特別寄与料は、相続人に対して請求するものなので、一般的には法定相続分などに応じて支払うことが多いようです。

特別寄与料は相続人以外の人が請求するものですから、相続人に対する請求のタイミングが難しいところです。

相続人全員に対して特別寄与料の請求をしても、遺産分割協議終わってからだと、全額支払ってもらうのは難しいかもしれません。なぜなら、遺産分割協議で自分に入る予定の財産が明確になりますが、そこから特別寄与料支払うことになるため、「相続分が減った」と思われてしまうからです。

そこで、特別寄与者としては相続が開始したら、なるべく早くで相続人に特別寄与料を請求する必要があります。少なくとも遺産分割が終わるのを待たずに行動してください。

相続が発生してから、いろいろな要望が出てきそうです。

できれば、遺言書を書いて意思を明確にしたほうがよさそうです。

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