よくわかる公的年金講座⑥ 老齢基礎年金の繰上げ受給
老齢基礎年金の繰上げ受給
老齢基礎年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間でも繰上げで受け取ることができます。
しかし、繰上げ支給の請求をした時点(月単位)に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。
繰上げの方法には、全部繰上げと一部繰上げがあります。
繰上げ支給の老齢基礎年金を受けても、特別支給の老齢厚生年金は支給され、繰上げ支給の老齢基礎年金は、全部繰上げ又は一部繰り上げのどちらかを選べることになっています。(諸条件がありますので、すべての方が選べるわけではありません)
全部繰上げ
年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、「60歳に達した日」とは、60歳の誕生日の前日になります。(例)4月1日生まれの方が60歳に達する日は、、誕生日の前日の3月31日です。
全部繰上げを請求した方は、下記の減額率によって計算された年金額が計算されます。
減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数
昭和37年4月2日生まれ以降の人の減額率の引き下げ
2022年4月から減額率が0.4%に引き下げられます。計算式は、減額率=0.4%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数となります。
ただし、年金の繰り上げ率が月0.5%から0.4%になるのは、男女を問わず、昭和37年4月2日生まれ以降の人(令和4年4月1日以降に60歳に達する人)です。
昭和37年4月1日以前生まれの人は、今まで通り繰り上げ率は月0.5%です。
繰下げ受給を検討されている方は、対象者になるかどうかを社会保険労務士や年金事務所等にご相談ください。
請求時の年齢 | 請求月から65歳になる月の前月までの月数 | 減額率 | 昭和37年4月2日以降生まれの人 |
60歳0ヵ月~60歳11ヵ月 | 60ヵ月~49ヵ月 | 30.0%~24.5% | 24.0%~19.6% |
61歳0ヵ月~61歳11ヵ月 | 48ヵ月~37ヵ月 | 24.0%~18.5% | 19.2%~14.8% |
62歳0ヵ月~62歳11ヵ月 | 36ヵ月~25ヵ月 | 18.0%~12.5% | 14.4%~10.0% |
63歳0ヵ月~63歳11ヵ月 | 24ヵ月~13ヵ月 | 12.0%~6.5% | 9.6%~5.2% |
64歳0ヵ月~64歳11ヵ月 | 12ヵ月~1ヵ月 | 6.0%~0.5% | 4.8%~0.4% |
全部繰上げを請求する際の注意事項
繰上げ請求するといくつかのデメリットがあります。十分理解した上で繰上げ請求するかどうかを決める必要があります。
- 一生減額された年金を受けることになります。 65歳以降も一度減額された金額は戻りません。ただし、振替加算の加算対象者は、65歳からでなければ振替加算が加算されないことから、65歳になると振替加算額分は増額されます。
- 繰上げ請求した後に裁定の取消しはできません。
- 寡婦年金の受給権者が老齢基礎年金を繰上げ請求すると寡婦年金は失権します。また、老齢基礎年金を繰上げ受給している人は、寡婦年金の請求はできません。
- 受給権発生後に初診日があるときは、障害基礎年金が受けられません。また、繰り上げ支給を請求する前の病気やけがで障害がある場合でも、障害基礎年金を請求できない場合があります。
- 65歳前に遺族年金の受給権が発生した場合は、老齢基礎年金と遺族年金のどちらかを選択することになります。多くの場合は、遺族年金を選んだ方が有利であるため、65歳まで減額した老齢基礎年金が支給停止になり、停止解除後も減額支給のままでデメリットは大きくなります。
- 受給権者は、国民年金の任意加入被保険者になれません。