よくわかる公的年金講座⑦ 老齢基礎年金の繰上げ受給(一部繰上げ)
老齢基礎年金の繰上げ受給(一部繰上げ)
一部繰上げができる方は、定額部分が支給される方に限られます。
坑内員や船員の期間が15年以上、厚生年金保険の加入期間が44年以上ある方、障害(障害厚生年金の等級による)の状態にある方が対象です。
一般的な厚生年金保険の加入者は、すでに特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給はされませんので、対象になる方が限定されます。
例えば、中学を卒業してすぐに厚生年金保険の加入者となった方は、60歳で厚生年金保険の加入期間が44年ある可能性があります。
この場合60歳から特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。(厚生年金保険の加入者でないこと(退職する等)が必要です)
また、高等学校を卒業して厚生年金保険の加入者となった方でも、定年期間の延長により64歳まで厚生年金保険の加入者であった場合は、加入期間が44年となる可能性があります。
この場合は、64歳から特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。(厚生年金保険の加入者でないこと(退職する等)が必要です)
上記の間に一部でも国民年金保険のみの加入期間がある場合は対象とならない場合があります。
なお、一部繰上げを希望する場合は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始前でなければ請求することができません。
長期加入者の特例については、最後に参考として記載しています。
- 昭和16年4月2日から昭和24年4月1日(女子は昭和21年4月2日から昭和29年4月1日)生まれの方は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が段階的に引き上がることから、この支給開始年齢に到達する前に希望すれば一部繰上げの老齢基礎年金を受けることができます。
- 一部繰上げを請求した方は、下記により、年金額は計算されます。
- 65歳からは老齢基礎年金の加算額が加算されます。
日本年金機構HPから
一部繰上げを請求される際の注意事項
ア. 老齢基礎年金の一部繰上げの請求は、特別支給の老齢厚生(退職共済)年金の定額部分の支給開始前でなければ行うことができません
イ. 国民年金に任意加入中の方は繰上げ請求できません。また、繰上げ請求後に任意加入することはできず、保険料を追納することもできなくなります。
ウ. 受給権は請求書が受理された日に発生し、年金は受給権が発生した月の翌月分から支給されます。受給権発生後に繰上げ請求を取り消したり、変更したりすることはできません。
エ. 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、事後重症などによる障害基礎年金を請求することができなくなります。
オ. 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、障害者の特例措置及び長期加入者の特例措置を受けることができなくなります。
カ. 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、寡婦年金は支給されません。また、既に寡婦年金を受給されている方については、寡婦年金の権利がなくなります。
キ. 老齢基礎年金を一部繰上げて請求した後、厚生年金保険に加入した場合、報酬比例部分及び繰上げ調整額は、在職支給停止の対象となります。
ク. 老齢基礎年金を繰上げて請求した場合、65歳になるまで遺族厚生年金・遺族共済年金を併給できません。
ケ. 老齢基礎年金を一部繰上げて請求すると、この分については次の減額率に応じて生涯減額されます。このため、受給期間の長短により、一部繰上げ請求しない場合よりも受給総額が減少する場合があります。
減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数
コ. 老齢基礎年金を繰上げて請求した場合、国民年金保険料の後納制度(平成27年10月1日から平成30年9月30日までの期間)による保険料納付ができません。
サ. 特例老齢農林年金の受給権発生に伴い、過去に農林共済組合から支給を受けた退職一時金の返還義務が発生した年金受給権者が、特例老齢農林年金の受給権発生前に老齢基礎年金を繰上げ請求した場合には、追加されたみなし厚生年金期間は、繰上げした老齢基礎年金の額の算定の基礎とはなりません。
長期加入者の特例による定額部分の受給
44年以上(※1)、厚生年金保険に加入している特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受けている方が、定額部分の受給開始年齢到達前に、退職などにより被保険者でなくなった場合、報酬比例部分に加えて定額部分も受け取れます。
この場合、被保険者でなくなった月の翌月分から定額部分を受け取れます。(※2)(※3)
(※1) 厚生年金保険の被保険者期間には、日本年金機構の管理する厚生年金保険被保険者期間・公務員共済組合に加入している厚生年金保険被保険者期間・私学共済に加入している被保険者期間のいずれか一つの期間のみで44年以上ある場合に限ります。(それぞれの期間は合算しません。)
(※2) 長期加入者の特例により定額部分が発生した後に、厚生年金保険に加入し被保険者となった場合、定額部分(加給年金額を含む)の支払いは停止します。
(※3) 受給者の方が退職後、事業所が被保険者資格喪失届を年金事務所に提出することで長期加入者の特例に該当する手続きも併せて行われますので、定額部分を受け取るための届出を、受給者の方がしていただく必要はございません。